2018年、夏、前髪を失う。

2018年、夏、前髪を失う。

片岡自動車工業の公演もまだ記憶に新しい七月。あれから3週間と少しか。今は生駒で「心」という作品と向き合っている。日付的に今日は7月20日なので、明日が初日なのであります。

北海道は劇団千年王國の榮田佳子さんと片岡百萬両の二人芝居。ランタイムは80分。

ナイヤビンギという素敵な山のカフェ空間がありましてですね。そこの奥のお座敷で打つ公演なのですが、主宰は、おれ、サカイヒロトさん、坂本見花さん、そして榮田さんのカルテッド。もちろんたくさんの方々の協力もありますけど四人で立ち上がり四人で作った生の芝居。

実は初演は2014年10月。秋だったのか。いつでもどこでも場所とお客様さえあれば演りたい演目として捉えている。榮田さんは場所や文化は違えど全く同じ年の女優さんだ。自分で言うのはあれですけどとてもとても相性が良い。良いと思っているのは自分だけかもしれませんけど、この人に出会うんだったらこれまでの演劇人生捨てたもんじゃないなぁってくらいに思える女優さんです。おれはおれで良いこと、そうでもないこと、たくさんの経験をそれなりに積み上げてここにきたけど、全然違った登山ルートで、でもわかるそれ!みたいなエピソードまみれの彼女です。出会いはいつだったか忘れましたけど、共演はこの演目「心」だけ。

2014年「心」は、リーディング公演という形での立ち上がりだったのだけど、なぜリーディングかというと、ざっくり榮田さんに大阪に来ていただいて一緒に稽古をする時間を十分に取れないために他なりませんでしたけど、試行錯誤の末、おれだけはホンを持たずに上演するスタイルに思い切った公演なのです。そもそも4年前は10日そこそこしかなかった稽古期間だったので、膨大なセリフ量をどうやって叩き込んだのかは覚えていない。おれはこの人に褒められると自信に繋がるという人がいる。その方が初演の観劇後声をかけてくださってその時の言葉は忘れもしません。今回もう一度この演目を上演するにあたり、その方の言葉がぐるぐると回りますが、前回に比べての発見も多いし、結局紆余曲折あったけど同じようなところに着地していて、初演は初演で胸を張ってやっていたんだなぁ。あとは全員が4歳大人になった渋味みたいなもので変化もあるかもしれません。

生駒だけでなくこの夏は記録的な猛暑に見舞われています。ナイヤビンギの会場にはクーラーがありません。毎日山を扇風機持参で登ったり、いろんな事をしています。ハンドメイド、どんと来いじゃないですか。おれたちなりのおもてなしを精一杯やっておりますよ。

坂本見花氏には娘がおります。母になられました。すごい。旦那さんはよく知る男で、かつて芝居を一緒に作り続けてきた男で、良い感じにぶっとんでる。そんな彼も音響だ。初演から。縁が交錯するようにして打たれる公演を、本来は劇場空間でするような事を、とんでもない場所でやります。でもそれだけの価値があるし、あの場所の恩恵を受けながら血が巡ります。

お局ちゃんでは、延命さん、是常さんが中野劇団さん「代役」でもう公演を終えられていて、関ヶ原では森崎さんが自劇団マウスさんの公演でぶいぶい言わせています。真裏で小林夢祈くんも演出やってます。すごいバイタリティの人たちだ。負けていられない。

主宰サイドにもいますが役者に専念させてもらえる環境はとても心地よいです。言い訳なんてする気もないし、この作品はどんな方にも見ていただきたい一心でやってます。暑さで半分溶けそうになりながらアイスクリームみたいに作ってます。

未知の作品に出会いたい方は今からでも遅くありませんし、どうぞナイヤビンギにお越しください。料理もおいしくて冷たいカフェもあります。

今、一番やるべき演目と向き合えています。だけどこれはまだまだ小さな一歩。この公演を実りあるものにしてなおかつ、さらに可能性を広げていきたいのです。役のイメージに合うように髪の毛を切ったのもまるまる4年ぶり。

敢えて強気な発言で締めくくろうと思いますけど、まだご存知ない方には是非、榮田佳子という女優の凛とした演技とそれを繰り出す人間性の凄み、歴戦の公演のアウトラインや中枢を担い続けてきたサカイヒロト氏の骨の髄に染み渡る舞台照明と美術のコーディネート、ファンタジー女性作家の暴れ狛犬、坂本見花の脚本と演出、あと、おれ。おれのこともちゃんと同列な感じで格好よく書こう。エンタメお化けのエンタメじゃない部分は結構鋭いナイフのような片岡百萬両です。全て必見!必感!この奇妙奇天烈摩訶不思議なメンツでの公演が関西でみられるだけで、すごいと思う。

なんかさ、最近「え、その劇場でその金額!?」と驚く公演が多い。ほんで観たら大抵思うんだ。金返せよって。思わないの? おれめっちゃ思うし、次から見に行かない。高いから。

まぁようするに批難でもなんでもなく、こういう事を考えるくらいの元気な奴であったと思い出しましたよおれは。ええもん作ります。嘘言わない。

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