おもいっきり当社比、満月動物園「レクイエム」観劇。
space×drama企画のファイナーレという事で劇団鹿殺しの丸尾丸一郎さんと満月動物園の戒田竜次さん、スペドラの第一回、第二回の優秀劇団が手を組んでまさしく企画の最期に花をそえる形の公演だった「レクイエム」。しっかり拝見させていただきました。
ホラーっちゅう事でしたけど戒田さんの演出により間口が広がっていた気がしました。台本はたぶん読んでるとしんどいくらいクレイジーなんだろうけど。
先日の「名探偵青島青子 -劇場版」に出演してくれていた河上由佳さん(ゴールデンレトリバー)が一肌も二肌も脱ぐ作品で、ここまで隠してきた爪やら牙やらをひんむいて、河上由佳という女優の鋭さがビンビン伝わる役でした。同業者っていっていいかわかんないんですけど、観覧車シリーズでの死神役しかり、ひとつのプレイをブレずに演じきれる事は、一番難しい。役者だったら物足りなかったり不安だったりであちこちで足し算をしてしまって、結果として作品自体が持つエネルギーとは別のなにかが付け足されてしまうなんて事、ありがちなんだけども、河上さんの削ぎ落としたシャープなスタンスは作品全体の印象を押し上げていた。制限のある中でこそ輝きを放つのがしびれますね。三週間前までゴールデンレトリバーをやっていた人だとは思えませんでした。
たぶんそんな事を言うと本人は否定するし、戒田さんは茶化したりするかもしれないけど、河上さん凄かったーって言うその凄さの内容がINDEPENDENTからずっと見たり共演させてもらったり、出てもらったりしてる仲だからなのかわかりませんけど、付け焼き刃では到達出来ない事をさも当たり前のようにやっている。本人に自覚があるかどうかはわかりませんけど。
大抵、そこそこの力が身に付いてきた表現者は「俺を見ろぉ!」「すごいだろぉ!」って感じで凄さパフォーマンスを押し付けてくるんだけど、近年はそれがフォーマットになりつつあるんじゃないかとさえ思えていて、心の中では「いや、そこまで凄くないやん」とか「それを凄いと定義されても」みたいな穿った気持ちで見てしまう。そういった光景は、一回や二回じゃないのでもしかしたらこのオラオラ演技、演出側もそういう要求を役者にしはじめているのか?とさえ感じてしまっている。もちろんそのスタイルが多くの観客を魅了するわけだし、凄いは凄いから凄いでいいんですけど「達者プレイ」のその先に何が待ち構えているのかは、正直よくわからないでいる。少なくともそういうパフォーマンスがとても苦手な僕としては、レクイエムは会心の一撃でした。
ひとつの事を遂行しつづける厳しさや難しさの中で戦っていたのは河上さんだけじゃなくて、諏訪さんも美しかった。満月動物園において河上さん、諏訪さんのお二人はすでに人知を超越していてもはや風神雷神みたいな神格化が始まっているのかもしれませんね。
あくまでゲスト出演なんだけども丹下ちゃんは別の役割がしっかりあって、そりゃ秋にINDEPENDENTで戒田さんと一人芝居もやってるし、劇団員以上の何かがきっとあるとは思っていたけど、想像の斜め上を行っていたなぁ。どこに出演してても丹下真寿美が出演している作品ならきっと面白いのフラグが立ち始めているような気がする。
近藤ヒデシ君もひさしぶりにフザけていないのが観れてよかった。すぐにグダグダになるからなぁ、同世代としては。あくまでいちファンの意見としてのコメントなんですが、西原希蓉美ちゃんは、もうそろそろドラえもんみたいな喋り方以外の発声方法やアウトプットの方法を身につけないと今後しんどいかもしれないなぁ。ポテンシャルめちゃめちゃあるだろうに。
感じ方はそれぞれだし、イチ個人の意見でした。
宣伝から全て満月動物園さんのspace×dramaに対する気持ちもしっかり舞台に乗っていて、作品のジャンルを飛び越えていて清々しかった。
そういえば自分もspace×dramaには何度も参加させてもらっていて、劇団としては特別招致とかポストパフォーマンスとか、変な枠でばっかりの参加だったけど、あんまり花を添えれなくて残念でした。