後書きの続き。

後書きの続き。

たった一度きりだった舞台「スーパーソニックジェット赤子」の事をもう少しだけ振り返って書きます。こんばんわ、片岡自動車工業です。

堀川高志さんに舞台写真を撮っていただきましたので、その素晴らしき写真と共に振り返りたいと思います。

片岡自動車工業の公演のほぼ半分は青島青子が登場する舞台です。彼女が主演の作品もあったくらいで、その原点こそ「スーパーソニックジェット赤子」なんですが、赤子の同級生にして優等生、愛犬エンジェルと意思疎通が出来ない彼女は麻薬捜査官となり、愛犬は麻薬をキメすぎてラリってしまうというぶっ飛んだキャラクターですが、なぜ彼女に大向こうの「青島屋!」がついてくるのか、一瀬尚代という名女優でないと青子は成立しないし、微妙に傾けてない彼女の演技に拍子木が入る演出は辻褄は合ってないけど、なんかわかる、というそんな感じ。愛犬エンジェルを演じてくれた堀内玲ちゃんも、今までに見たこともないハッチャケっぷりで、本番が一番輝いてました。やっぱ女優だなぁ。

宇宙人という謎の生命体を演じてくれたのが大江雅子さん。去年に引き続きほっかむり。肌も銀色。でも大江さんでないとこの役は出来ませんでした。役がハネる瞬間を見たという感じ。こんなにも面白い大江さんは、普段とても繊細で飲むと無茶苦茶になり舞台では怪優になるという多面性のあるお方。隣の転送装置の中に入ってたのは堀内玲ちゃん。可愛らしい子にラリらせたり箱かぶせたり怒られそうな演出ばかりしちゃってました。

リズムを作り「この物語はこう楽しむんですよ」と安心感と道筋を与えてくれた美津乃あわさん。稽古場から劇場空間まで随所まで女優としての技巧と魂が散りばめられていてあわさんこそ真のエンターテイナーだなぁと感じさせられました。すごい女優さんに重たくて長いものを持たせて、しかもメイン役以外でも死ぬほど出番があるというここも怒られそうな演出でした。全てに応えてくださったあわさんに感謝。さすが赤子の母。

河上さんと有元さん。これメイン役じゃないんですけど終盤かなり重要なポジションなんですよ。ダム部のアイちゃんもマリアテレサもめちゃめちゃ難しい役だと思っているんですが、このお二人の攻略が凄まじく、座組の中で一番重心がしっかりしてたと思います本番でも。有元さんはホラ、中でもかなり体力のいる役でしたし、稽古場での処理能力の高さと正確なお芝居は作品を骨太にしてくれました。マリアテレサのようなやつが居なくちゃ、赤子やスパークが冒険している気になれませんからねぇ。

ナサとキム。この作品を書いた時、お客様に役の名前を覚えてもらうのが本当に苦労させてるなぁ、もっと簡単な名前でいいよなぁと思っていた頃だったのでナサの人はナサ、キムはもはや呼ばれる時、規制音がなるような役どころでしたからねぇ。ほんと、何やってんだって思われるんですけど、タブーとされがちな事もちゃんと向き合って描きたかったし、天才とバカは紙一重であると思い配置したナサの大胆な役どころです。真壁ちゃんと詩映莉ちゃんは役に殉じてくれるだけでなく、他では出来ないところまで押し上げてくれました。役者が役を面白くする代表例でした。

ここだけ切り取ればめちゃめちゃハッピーに見えるシーン。七味ちゃん演じるアメリカ(役名ですいません)たちが丹下ちゃん演じるスパークが一命を取り止めた事に安堵するシーン。舞台でしか見られないその一角には無言の赤子が立っていて、それがしっかりとエッジになるフィナーレがしっかり描けたんじゃないかなぁ。

それでもやっぱりね、ぼくが見たいのは赤子とスパークが一緒になるという真のエンディング。現実でも舞台でも絵空事になんかならなくて、ちゃんと折り合いは着けなくちゃいけない事ってたくさんあるんじゃないかなぁ。こういうエンタメ芝居を作る上で、「舞台だから」っていう言い訳はほとんぼ無敵なんですけど、犬が喋れる事の説明よりも、スパークが赤子の元に戻ってこれた理由を語ることに力を注いだ物語です。

大事なところはもう言葉にならなくて、抱き合ったり、確かめ合ったり、触れ合ったり、それだけで十分伝わること、いっぱいあるじゃないですか。100分間でこのバディ感にたどり着けたのは、やはり丹下ちゃんと林檎さんあってのもの。舞台を閑散と感じさせたなった大きなわけは二人の演技にあると思っています。

また書きます。

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