作品の毛並み。

作品の毛並み。

「言わなくても伝わってる」っていう考えはとても危険。長年劇作を共にしてきた相手でも、やっぱり考えは伝えておかないとすぐにすれ違う。で、改めて初めての環境に身を投じている自分は、自分自身に言い聞かせるように「伝える」事をこれでもかと言うくらい入念にしている。

おれの台本で役に身を窶す人が多くて、片岡自動車工業になってからはもうずっとそうなんだけど、今回ほど初めての人が多い現場は過去になくて、引き締めてかかっているけど、イメージの浸透がしっかりしている。本番まで2週間半。稽古場全体がなんとなく「通したい」という感じになってきていて、予習や復習がまざまざと出ていて演出冥利に尽きる。

今回の演目では、家族を描いている。こんな事を描いてますよ!みたいな事を上演前にアナウンスしすぎるのもどうかと思うけれど、凪(なぎ)という中学生の女の子を中心にその家族がいて、同級生たちがいて、無関係な人たちもいる。物語はとてもシンプルで、今まで作ってきた作品の中で一番スマートだし、とりわけ変わったことをしていない。日常を描きたかったっていうのもあるけど、別の作家が割り込む余地を残し、両面性のある作品を視野に入れて、映画やドラマでよく見かけるドラマチックな瞬間は一切描かずに、その前後ばかりを切り取った。台本だけ読んでもなんのこっちゃわからなかったりもするんじゃないだろうか。そういう意味では「切り口」だけが一級品な作品になればいいなぁと思っているし、演出ではイメージの伝達をこれ!と決めてやっていて、「限界」のほんの少し上の「結構頑張れば実現できる」レベルのパフォーマンスを散りばめた。

作品の毛並みをあたらめてアナウンスすると、本作品は「一つの家族が困難に立ち向かう粗様をダイジェスト形式でハートフルかつファンタスティックにお届け」です。おれはハンカチなしにはこの物語の顛末を観ることが出来ない。

家族にキャスティングしているのは、伊純ちゃん、真壁ちゃん、川添さん、有元さん。
この4人が家族なんだけども、もうすごい家族感。お父さんである川添さんがこれまでに見たこともない雰囲気でチャレンジしてくれているし、有元さんの受信発信の速度やピントの合わせ方が素晴らしい。

物語の主軸にかなり近い部分では飯伏ちゃん、下野くん。
自分なりの解釈を入れつつ、彼らの属性を見ながら軌道修正。
自分色にも染めていきたい。

女子グループと某店員には、鯉寧ちゃん、堂床ちゃん、楓ちゃん、稲田ちゃん。
彼女たちにしか出せない集団性と、暖かさとユーモアが詰め込みたい。
ここもみんながいよいよ自家発電を始めていて仕上がりが楽しみ。

そして役所が限定されているがコンビで登場する洋平ちゃん、乃緑さん。
今回の座組の中で一番、お互いに理解しているのが洋平ちゃんだ。乃緑さんも勘が良いし気も回る。ここでしっかりドラマを押し上げたい。

最終改定稿で髙島くんを新キャラとしてキャスティング。白井くんが演じる役と物語の側道を走り続けてくれる。
ここのシーンずっと面白いんだよなぁ。
同世代の男でああでもないこうでもないと作るのはかなり好き。

で、一番外野にいるのが、おれや、まこちゃん。
担当は短いけれど、印象に残るポイントゲッターだ。まこちゃんは一瞬でかなりの爪痕を残して帰る。

これでピースが全て埋まっていて、綺麗に全員のバランスも取れている。

結果「普通の話でしたねぇ」と言われようが「そうですね」ともなるし、だからと言って自分にしか出来ない演出方法でお届けしているので、この作品が上演される日が来るのをいちばん心待ちにしているのは自分だと思う。そうそう、おれももちろん出演しています。学ランでウロチョロしています。ランタイムに問題があったら出なくなるかもしれないけど、主宰、脚本、演出も兼ねながらでは、今くらいの役がちょうどいい!みたいなのが見つかった感じ。だからと言ってチョイ役でもないしちゃんとした役です。

「お局ちゃん御用心!」での是常さんと丹下ちゃんのビンタ合戦のバチン!カカン!が山程ある鬼のサンプリングシーンで「その演出!まだしゅんでないです!」みたいなコメントが飛び出すほどの要求はしていない。手を抜いているわけではなく、骨だけを太くする作業に役者が集中できるように、引き算方式とも言えるかもしれない。

変わった事や新しい事とはきっと真逆で、プロット段階ではもっと難しい構成になる予定だったのだけど、色々あって、骨だけが全部曝け出される上演スタイルになった。

開演からの約50分の前半は完全におれの脚本演出で「現実」と呼ばれる物語。後半はファンタジーだ。なので同時に二本を見比べるような形になるとも言えるし、後半はほとんどノータッチ。個人的には挑戦したいことが明確にあったんだけど、あちこち不具合が起こって結局この形に落ち着いた。どうあれ今回の判断するタイミングはここしかなかったと思う。

余談だが「ツンとドラ、大丈夫? 仲良くやってる?」的な事をやたら聞かれる。みんなこの手の話本当に好きだな。人が事故ってる感じのやつ。仲良しこよしでやるつもりもないし、だからって喧嘩ふっかけてるわけでもない。あくまでもクリエィティブな攻防を繰り返している。センスややりたい事、大切にしてることなんて人それぞれだからね。

明日も稽古ですが、もう後半残りしっかりやれば、通しが出来る。この段階の向こう側に昇格できれば、名作と呼ばれる可能性が見えてくる。まだまだいける。

クラウドファンディングご支援のお願い

片岡自動車工業クラウドファンディング

2022年7月14日 ●クラウドファンディング募集開始しました! 初となる東京進出公演決定!実現に向けて応援よろしくお願いいたします!【2022年8月31日25:59まで】

詳細はコチラから!

クラウドファンディングページより

はじめまして。片岡自動車工業 主宰 片岡百萬両です。このプロジェクトページに目を通して頂き誠にありがとうございます。
2014年。僕が人生を掛けて続けていきたいと思っていた劇団ミジンコターボが10年という歳月で解散しました。解散と言ったのも主宰である僕ですが、それから2年間は薄暗い部屋から一歩も出ない完全に空白の時間を過ごしました。親にも迷惑をかけながら、悶々とした日々に終止符を打ったのも、また演劇がしたいという気持ちでした。【片岡自動車工業】という名で演劇活動を再スタートし、2週間のロングラン公演中に大阪府北部地震が発生し公演を一部中止せざるを得なかったり、コロナ禍のなかで思うように稽古や公演ができなかったりと主宰としてまだまだ経験していないことだらけだと思いました。そんな中、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティという目標としていた劇場に進出することが叶いました。ずっと応援してくれた家族の支えがあり、また僕の創る作品に全力で挑んでくれる俳優とスタッフがいて、そして観に来てくださるお客様が沢山の声援と拍手を送ってくれたからこそのシアター・ドラマシティ公演でした。

一つ大きな目標を達成し、これから一人で続けていくには限界を感じていた僕に「チームになろう!」と声をかけてくれる仲間がいました。片岡自動車工業の公演で主演を三度務めた、存在だけで空気を明るくしてくれる女優の袋小路林檎さん。僕の古くからの友人で、一時期はラーメン屋の店長まで上り詰めたのに「やっぱりエンタメがしたいっす。」と言って映像編集や制作業務の勉強をしている俳優の澤奈津樹さん。劇団時代は新人だったけれど、そこから一人メキメキと経験を積み脚本や演出、演出助手までするようになったムードメーカー女優の真壁愛さん。そしてこれから先、成長し素晴らしい女優になるだろうと声をかけた若き精鋭たち、川上藍香、川嶋芙優、椎木ちなつの総勢7名となり、東京進出公演が決まりました。劇団の解散から8年。全くもって想像していなかった未来に冷や汗をかきながらも、片岡自動車工業東京進出公演に向けてワクワクが止まりません。実現に向けてご支援よろしくお願いいたします。

続きはコチラから!

シェアする