初の二本立て公演終了いたしました。

初の二本立て公演終了いたしました

片岡自動車工業vol.3「関ヶ原の見物人」片岡自動車工業vo.4「お局ちゃん御用心!」二本同時公演、終了いたしました。1900名を超えるご来場、まことにありがとうございました。

2018年6月18日の朝、関西が大きく揺れました。公演中の出来事で、関西はそれどころじゃなくなっちゃってHEP FIVEも閉館となり、その日の公演は中止となりました。楽しみにしてくださっていたお客様、上演できずに本当にごめんなさい。

と、ここまで書いて、この後の記事を何度も書いて消して書いて消しての繰り返しでこんなタイミングまであとがきをまとめられずにおりました。

あの日。
舞台監督の今井さん、音響の谷口大輔さん、照明の加藤直子さん、映像の赤星マサノリさん、制作の徳永さん、おれ、そして劇場の星川さんの7人で隅々まで点検しました。組み上がった舞台美術や釣り込まれた照明、バックヤードや贈り物のたくさんのお花たちの安否と、以降の公演がどのようにして行っていけるのか、目処が立つまで6時間くらいの手直し。スタッフさんたちのまず安全を確認した上で慎重な目視や、二人一組での脚立作業など。現場には万が一に備え少数精鋭で小屋入りし、役者さんたちには待機してもらいました。なにかやってるほうがまだ気が紛れるもので、続報を待つだけの人たちの不安や胸中は計り知れませんでした。

でも、ハートは燃えたままだし、挫けたりなんかしてられないし、結局あいかわらず一生懸命でした。翌日にも開けれる幕のために備えに備えた一日。翌日19日は「乱入編」の場当たりを予定していましたけれどもそれどころではない、という事でしたから、後日に振り替え。でも
「出演者の柏谷翔子ちゃんの予定していたバースデーサプライズも、それどころじゃないですかねぇ」と言うと総意で「それはやるべき!」と言ってくれたスタッフさんたちに胸を打たれました。こんな時だからこそ明るい事には全力で!その空気は稽古中からずっと広がり続けてきたものでしたし、背中をおしてくださる頼れるプロフェッショナルなスタッフさんたちに大感謝。柏谷翔子ちゃん、6月19日に生まれてくれてありがとう!
なにをおいても、あの方々の尽力がなければ次の日からの上演できたかどうか。

でも明けました!
竹内獅士丸さんの津軽三味線ライブからでした。あの演奏のすさまじさはずっと忘れる事はないだろうなぁ。公演が再開した日は「関ヶ原の見物人」のみの上演でしたから、まだ修正が追いつきました。「お局ちゃん御用心!」キャストの皆さんに無理させれずに済んだのはよかったですが、上演が2日も空いてしまう女優陣の心中は穏やかではありません。もうここからは毎日初日です。

翌日から無事に公演再開。もちろんHEP FIVEが開かれていたらという条件付きでありましたが、可能性が残っていてよかった。下手をすれば残りステージ全部中止とかになってもおかしくありませんし。でも出来ました。そこからの作品の迫力は凄まじかったです。

お客様に安心してご覧いただけるように、まるで祈るような気持ちでもおりましたから。歯をくいしばることなんてこの一年で随分ありました。もう決断の連続で、判断も迅速で、その流れで再開するという事を、徳永さんはもう善処してくれはじめていました。この日の「関ヶ原の見物人」のアクトは凄かったなぁ。劇場にお越しいただいてありがとうございます!がたくさん詰まっていました。

素晴らしき先輩方にいて頂いたのも重要で、そして飯嶋松之助くんと言うスーパールーキーをお迎えしたのも手応えが抜群でした。出演者さんたちについてのコメントはまだ改めたいと思います。「フザけたシーンやからこそ全力でやる」「この物語はあくまで俯瞰」「格好悪いのが良いよな」みたいな言葉が飛び交う男子校のノリみたいになって最後は炎みたいになってました。ダンサーが核になるこの物語の理不尽さのやり場のない怒りが大詰に押し寄せてくるこのシーンは「ヤァヤァ演劇が演劇の枠をすっかりはみ出ていて、これがやりたいことなんじゃー!」って思わされてばかりでした。ダンサーズは二本どちらも出演してくれていますからね。

翌日、満を辞して上演できた「お局ちゃん御用心!」の女優たちの大一番は、「関が原の見物人」たちの魂をそのまま引き継いだ形で開幕。開幕から超痺れる演目にしたかったので、7年や8年も前からやるならこの始まり方と妄想していたのが一気に爆発しました。女性の開口一番のあの「行ってらっしゃいませ」から始まるところはお気に入りのワンショット。

「お局ちゃん御用心!」は快作を目指しました。もちろん毎回そうなんですけど、演出としてのわがままを通し続けたザ・エンターテイメント!って感じの作品のくせに悪ふざけのオンパレードな大奥。悪ふざけは、ふざけて作ると全然面白くなくて、御客さんにお届けする上で稽古の積み重ねがモノを言う作品。どこのシーンもアドリブなんてなくてみどころは全て稽古から押し上げられる気迫と息のあったパフォーマンスたち。グダッて見えていたとしたら演出の責任でありました。

稽古中から誰よりも早く脚本を離し、誰よりも自分に厳しく、そして誰よりも愛が滲み出ていた袋小路林檎さんの名刺になるような作品になれば良いなぁと考えておりました。それでいて出演者さんたち全員にしっかり持ち場があって、目が離せない一本。

初参加の堀内玲ちゃんの存在も大きかった。「これ面白いです!」を連呼するその好奇心とチャレンジスピリッツの塊は女優さんたち全員の心に火をつけました。作品内容についてのあとがきはまた改めて。

※エンタメは時事ネタとも表裏一体であると思っています。今だからこそやるべきシーンを全力でやりきってくれた一同に、こんなシーンで感動すらしていました。ゼッケンは全員の手書きです。大奥の衣装を本気で作って頂いくにあたり、植田さんには早着替えの存在を撮影当初から伝えていたおかげで、すごいチェンジを舞台上で出来ました。想像を絶する知恵と工夫に脱帽!

衣装を着て通し、と行ったらもう物語は止まりません。諏訪さんとダンサーの大一番。

映像の赤星さんのキッカケも集中していた。ここのシーンの全員が酸欠になるような畳み掛けはパロディも交えつつ、ハートフルまで根こそぎみどころ。竹千代の泣いてもええねんぞメーター。赤星さんのオペでした。おれも実は効果音を叩いてました。

いつの時代も娯楽はあって欲しい。と前説でお話させていただきました。お客様からは「元気もらいました!」「楽しかったです」「次回公演楽しみにしています!」とお声かけいただきました。SNSでの感想もありがたく拝見させてもらっています。でもカーテンコールで袋小路林檎さんがおっしゃっていた通り、我々でさえお客様から元気をいただく事の連続でした。

幕が開いてよかった。
上演できることは当たり前じゃない。
でも劇場の扉が開かれてることの重要さ。

何より突き抜けたこの「お局ちゃん御用心!」に自分自身も励まされました。梅田の駅からすぐのHEP HALLですんげー作品が二本もやってるよ。みんな観に来てね!と堂々と言えるそんな公演。

去年、小屋を抑えて、HEP HALLでロングランすると言った時、「え、無謀やろ」と笑われたり心配されたりもしました。でも今回関わってくれた人たちは誰一人笑いませんでした。覚悟を持って参加をしてくれた皆さんがいたからこそ実現できた公演でした。誰一人欠けても成立はしなかったと思います。

おれはこれからもまだ挑戦をして行きたいと思っています。この公演で片岡自動車工業の存在を知ってくれたお客様、初めて演劇に触れて頂いた方、誰かのファンになってくださった方がまた劇場に足を運んでくれて、観たい作品を見れる、そんな風に演劇が生活のどこかに存在する明日や明後日のためへの小さくて大きな第一歩でした。

締め括りとして。
片岡自動車工業は、演劇やダンスそして生演奏、何よりお客様たちにとって交差点のような存在になれば良いなと思っています。交わって、別れて、またそれでも集まれるときは別の時代で集まろうぜ!みたいな。また集まれたらそのときは「お局ちゃん一味」に会いたいですね!
再演希望!続編希望!みたいなお声はもうどんどんSNSで呟いちゃってください。もしかするともしかするかもしれません。

…関ヶ原の見物人は?
そんな野暮な事は言いっこなし。ラストはいつでも女優に華が咲くべきだ!

長い後書きになっちゃいました。読んでくださってありがとうございます。ともあれ最後までロングランを駆け抜けることができたこと、過去最高動員であること、自分自身がしっかり役者として復帰できたこと、怪作二本を同時に上演できたこと、雨にも風にも何にも負けなかったこと、全てを胸にもう次への旅支度を進めています。ちょっと寂しいですがしんみりするのもアレですから今回はこの辺で

ドロン!

また書きます。
ありがとうございました。

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