ファミリーミュージカル「夜明けの町と数奇な姉妹」終演。
お久しぶりの日記の更新になります。こんばんは。
吹田メイシアター千里金蘭大学共同事業ファミリーミュージカル「夜明けの町と数奇な姉妹」全公演が大盛況の元、無事に終了いたしました。ご来場くださった皆様誠にありがとうございます。僕は3年連続での脚本演出を担当させていただきまして、せっかくなので後書きのようなものをここに記しておこうと思います。
本作ではゲストを含めると44名という超大所帯での公演になりました。ものすごい人数でしたので、まず顔と名前を一致させるまでが大変でした。進行していくリハーサルの中で、3年連続で出演してくれている出演者たちはそこらへんの俳優よりよっぽど俳優として立派になってくれていて、それが大人だろうが小学生だろうが全員頼りになりました。本当にありがとう。今年も初舞台の出演者が多く参加していたので、リハーサルの始まりは基礎をしっかりやり込みました。親子での参加、兄弟、姉妹での参加もいて親や兄や姉がしっかりと引っ張ってくれていてそれもとても気持ち良かったです。
こぼれ話になりますが、本作「夜明けの町と数奇な姉妹」は、昨年上演した「ドコゾノ旅一座の冒険譚」で旅一座たちが巡る世界の中で立ち寄った不思議な崖の町の子供達のお話になっていました。それを言うとその旅一座でさえも、一昨年に上演した「愉快な国の毒舌王妃」で滑稽な旅一座として登場していたので、このファミリーミュージカルにおいて個人的な取り組みである”共通の架空の世界観で巻き起こる物語”であることを昇華させつつも”一本一本がそれぞれ独立した物語”としてご覧いただけるように劇作しました。
・踊りと歌が禁止された国で生きる国民と記憶を失った幽霊たちの「愉快な国の毒舌王妃」
・ひとかけらのチーズから始まる旅芸人ポルカの生涯を描いた「ドコゾノ旅一座の冒険譚」
・運命を隔たれた親子と姉妹が互いに想い合う不思議な町の「夜明けの町と数奇な姉妹」
の三本は、機会があれば、連続上演なんかもしても良いと思うし、また上演する機会があればいつでもどこでも演れるんじゃないかなぁと思います。
僕自身は普段は演劇やコントを主に作っているのでミュージカルのプロフェッショナルではありません。ミュージカルともなると取り組み自体がそもそも大きく異なるんじゃないかと思います。ミュージカルは「あ、そこで歌うの?」のように歌やダンスが取ってつけたような、有り体に行ってしまえば、歌やダンスがなくても成立するような頼りない作りにはしたくなかったし、歌はダンスに仕掛けがあった方が絶対に良いと思いながらうんうんと唸りながらプロットを構築したり、音楽の高山さんとイメージをシェアしたりさせてもらいました。
音楽の高山さんは片岡自動車工業の「お局ちゃん御用心!!!」の主題歌も作ってくださっていて、このファミリーミュージカルの一年目からタッグを組ませていただいていますが、本作での楽曲に鳥肌が立ちました。美しくて感動的で、何より情緒に溢れている高山さんの楽曲を聞かされて「これは芝居のパートが持っていかれないようにせねば」と意気込むばかりでした。
本作のキーマンであるスタンストンと言う役は、ゲストのタップダンサーの細川慶太良さんに演じていただきました。彼とご一緒するのは初めてでしたが、ディスカッションに余念がなく、意見交換もたくさんさせてもらい、非常に大切な事ですが互いに譲り合いながら、同じくらいワガママになれたのではないかと思います。劇中で登場する「黄泉の国へ」と言うナンバーは、音楽がありません。舞台上も静まり返っていて、ただスタンストンがステップを踏む、と言うだけのシーンです。終盤にあるシーンですが、そこに至るまで歌やダンス、芝居のバトンをたった一人で受け取り、踏み始めるシーンです。出演者も全員が舞台袖から目を皿のようにして見守るシーンで、リハーサル時から演出席から瞠目してしまいました。なんか、こう言うのが劇作してて一番痺れる瞬間だったりするのです。これは裏話中の裏話なのですが3ステージあった本番の初日に機材のトラブルから彼のマイクがオンになっており、タップダンスだけでなく彼の吐息を拾うと言う事がありました。それを見て僕は「これはこの作品に必要なブレスだ!」と確信し、細川さん音響さんに相談し残りのステージもマイクをオンにさせてもらいました。作り込めば作り込むほどに生々しさからは遠のいていってしまう。ミュージカルの場合は余念がなくみっちりリハーサルを重ねますので、ライブ感とクオリティの天秤でいつもしどろもどろもしますが、いよいよ持って突破口となったのが今回の出来事でした。演出として今後忘れることはない出来事だったのでここに記しておこうと思います。
音楽の高山さんの作曲と僕の脚本からいち早くイメージをサルベージし、出演者たちを導いた歌唱指導の楠美さえこさんも、本当に頼れる存在でした。こんなにドラマチックな歌唱指導は見たことがない!というくらいでしたので、お客様にもその模様をお伝えしたかったです。振り付けのMIHOちゃんは、過去に幾度となくコンビを組んで振付を担ってくれたダンサーで、楠美さんの情熱的な歌唱指導とは打って変わって、冷静かつ的確に振付を行ってくれてさすがの一言でした。演出と歌唱指導と振付全員が同じトーンでも疲れちゃいますし。度重なるイメージのシェアにも食らいついてきてくれて、あたらめてMIHOちゃんに振付をお願いできて良かったと心から思います。
片岡自動車工業からは、美津乃あわ、袋小路林檎、川嶋芙優の3名と、演出助手に真壁愛が参加、劇場入りしてからは椎木ちなつも駆けつけてくれたので、もう総出でした。林檎さんとあわさんはメンバーでありながら片岡自動車工業の風神雷神のような存在ですので、物語を大きく担う役どころを演じていただきました。身内なのであれこれとここで書くのも気持ちが悪いのでメンバーの活躍へのコメントは控えますが、「この人らおらんかったら僕どうしてたんやろ」と何度も思いました。僕の演出や脚本を体現してくれる理解者がこんなにもいる事が、実は今回の作品の一番の成功の要因だったように思えます。
テクニカルの皆さんにも尽力いただきました。いっても今回のスタッフさんたちは僕よりも経験が豊富なおじさんたちだらけなのですが、僕の稚拙な演出をしっかり汲み取ってくださり、初舞台も含めた44名の出演者が安心して舞台に立てたのは、音響、照明、舞台監督、舞台美術、衣装のスタッフさんたちのお力でした。
いっぱい細かい事書きましたけど、今一番思っている事だけ書いてまとめますね。
3年目になった吹田メイシアターのファミリーミュージカルの脚本・演出を担当して、僕は人生でこんなにも「あ、ミュージカル好きやわ」と思った事はありません。もっと作りたいなミュージカル。
そんな感じで、「夜明けの町と数奇な姉妹」は大盛況のうちの閉幕いたしました。本当にありがとうございました。またミュージカル作りたいと思います。その時はぜひ、あなたも隣に。
台詞に書いてあるどこの挨拶かわかんない言葉で締めくくろう。
ソーロオンチャオ!