商店街の話【後書き】
こんにちは。片岡自動車工業・主宰の片岡百萬両です。
この記事では片岡自動車工業初となる東京進出公演「商店街の話 エキセントリックアーケード三部作」の後書きなどを綴ってゆければと思います。お暇がある方は最後までお付き合い下さいね。
結成してから(と言っても当時一人だったので)東京公演なんかする日が来るとは夢にも思っていなかった片岡自動車工業の公演。せっかくやるんだからずっとずっとやりたかった事に挑戦すべきと強く思い今回の企画が走り始めました。
・シリーズものは舞台演劇とあまり相性が良くないと感じていて、パート2の公演を打った際、パート1見てないしやめとこうって感じられる方は劇場へ足が向かないんじゃないか。
・運営の都合上、一作目と二作目の間に1年以上感覚が開いてしまった際、キャスティングやスケジューリングに問題が出て、連作と感じづらいのではないか。
その他諸々、色々な問題を解決するには、もう一気にやっちゃえよ。って事で、架空の商店街「玉虫色商店街」をテーマに三つの物語を一気に作り上げました。大変だったけど毎日が充実していたなぁ。
というわけで、それぞれの作品をご紹介してゆきます。
一作目に当たるのは
「レインボーショッピングセンターモール」
楓という少女が、世界を旅する夢を追いかけるため、生まれ育った玉虫色商店街のある街から出ていくため、いろんなしがらみと向き合いながら進む成長譚。
楓とラブ雄のラブストーリーとしても描いたのですが、ドーナツ現象の止まらなくなった商店街を背景に、主人公の楓に影響を与え続ける商店街の歪な登場人物たちが優しく温かくただそこにいる物語。三部作の中で、ストーリー展開が最もミニマムな作品。クライマックスでの楓とラブ雄のやりとりは、一方的にラブ雄が黙らされ続けるというトリッキーなシーン。何も考えてなさそうな人間だってたくさん葛藤していて言葉にできなかったことを吐き出す大一番。
唯一無二の親友、商店街を練り歩く虎柄ファッションのおばさん、なぜかお店の前に居座るニート、スナックのママと、情に厚い謎の男性、憧れていた先輩、ローカルラジオ放送局のパーソナリティ、商店街で喫茶店を経営する若い女の子や、玩具屋の娘、地元が推しているアイドルと追っかけ、世界を股に掛ける営業マン、主人公を愛する男と、その男を追いかける恋愛脳の女。
三作品の中で最も登場人物も少なく、ノスタルジックな作品でした。
二作目に当たるのは
「フレッシュマートストリートハリケーン」
商店街の裏の顔スポンジママこと九条泡子が、玉虫色商店街が抱える問題をたった一人で引き受けるハートフルな作品。かつて師弟関係であったスパイス長谷川との友情愛を主軸に、スポンジママが、過去の男たちの青春の場であった玉虫色商店街が抱える現代の問題に真正面から向き合う。
クライマックスの「九条泡子の大立ち回り」は出演者総出で、嵐の夜、ママボクシンググローブをはめ、たった一人で暴力団たちに立ち向かう一番激しいシーンで三作品の中で一番大変だったかもしれない。
この物語は、玉虫色商店街バが燃え尽き、戦いにしっかり負けてしまうのだけど、描きたかったのは、事件そのものではなく、それでも立ち上がる玉虫色商店街の人たちの明るさや強さでした。自らを顧みず、注げる愛情を不器用に注ぎ続ける逞しい女性とプロボクサーのいぶし銀な物語。
三作目に当たるのは
「セントラルポートアーケードサイクロン」
玉虫色商店街のある街に引っ越してきたトキコとヤスアキを中心に、衰退化したはずの商店街が大繁盛しているパラレルワールドにダイブする物語。フレッシュマートストリートハリケーン中で、スポット的に描かれていたものが主軸になった物語。商店街を守りたかった富田林さんという人物と、謎の神隠し現象に巻き込まれた警官や主人公のトキコの想いが、妄想の世界で交錯する。不幸の星の元に生まれついたトキコと、末期の玉虫色商店街の本当の姿とどう向き合っていくのか。パラレルワールドが生まれた瞬間に帰結してゆく物語でもあります。三作品を通して、楓、スポンジママ、トキコのそれぞれのヒロインの他に、もう一人、裏のヒロインが浮かび上がったのではないでしょうか。
関西の商店街を背景に織りなす物語なので、出演者の皆さんの言語はほとんどが関西弁でした。大変だったんじゃないかなぁ。みなさんありがとう。次の記事では、出演者さんと登場人物の紹介などが出来ればと思います。
では。