四度目の通し。
えー、あー、どーぞどーぞ、片岡ですどーぞ。
尼崎を飛び出しましては、遠方の公民館でロング稽古。期待を裏切らないメンバーの結束と影の努力で作品への集中力が上がり続けているため、割り稽古というシステムを導入。ちょっと時間で区切って1時間、2時間でも遅く入れるように、その間に出来る作業や各々のメンテナンスに充ててもらう方が効率は上がったりもするわけでして。13時からの稽古でも16時に開始とアナウンスがあったら休めたり出来ますし。
とは言いつつも結局みんなやる気に満ち溢れていて早くに集まってくれたりもして、劇団より劇団らしい集団になってますウサギたち。室内は飲食が禁止だったのでご飯休憩では外で一列に並んで昼食を取ってました。男子が一人だけいるよ!
仲が良いだけではなく切磋琢磨して競うところは競わないといけない構成になっている「THE 20回転の恋」。本番5日前。5ステージある本番のうち、残りの座席はもう数える程。あとは当日券で入れるだけ入ってもらおうと胸をドンと叩く制作の大さんとハシクミさんの頼もしさたるや。
そして夕方より全員で4度目の通し。小屋に入るまでに通しを6回行う。それだけ練習量が求められる内容が詰まりに詰まった作品だけども、4度目の今日の通し、遂に、出演者たちが脚本と演出の手から離れ始めた。自分たちでもっと良く見せよう、どうすれば良いかなどの試行錯誤が稽古中に所狭しと繰り広げられていて目がいくつあっても足りない。自分と演出助手の真壁ちゃん、そしてスペシャルアドバイザーの大江さんの目を以ってしてもまだ追いきれない程に分散。実はこの空気になるための礎は男子メンバー、特に中心になってくれているのは澤くんとドリルくんだ。そこへよっくんと小川くんが呼応してチームが出来上がり、男子のチームワークが発揮され始めた。それが徐々に徐々に女子へと伝染していき、最初は片岡だけの頭脳で考えていた物語も、とことん24名の出演者と3人の演出チームによる巨大な蜂の巣のような頭脳に進化し始めた。通しの内容は荒かったしミスもあったけど、ずっとずっと楽しかった。
「お局ちゃん御用心!」は全部のステージを音響オペをしながら見ていて、もう何度でも観れちゃったけれども、「THE 20回転の恋」も何度でもいける。そんな演目になってきました。フルオーディションでここまで伸びるのは期待以上だし、そうなれば演出もまだまだ要求できる範囲が増えてくるわけで、当然そこらじゃお目にかかれない名作の予感がプンプンし始める。
エンディング付近、会心のシーン運びを見せた難波ちゃんは初舞台とは思えない程にピュアで直向きで胸を打ったし、よっくんのキャラが一際輝き始めたのにも震えた。中盤ではこれまた初舞台の藤田七海ちゃんがとうとういっぱしの役者の姿へと変貌を遂げ、ピンポイントでは神山くんが大活躍だった。
イチゴジャムのように詰まりに詰まった果実のような甘くて酸っぱくてプライマルな「THE 20回転の恋」はもう来週の今頃には終わっているという儚さ。ところで芝居関係の人たちにはあんまり興味を持ってもらえないという悩みもあって、まぁそこらへんは今に始まったわけでもない永遠の課題みたいなものでもあるんだけど、やっぱ観てもらいたいな、と思いつつも、同業者の中でも感性の違う表現者からすれば琴線に触れないただの賑やかな芝居に見えるのかもしれない。でもそれでも敢えて言うけれど、近年の自分の劇作は骨が太くなってきた。
大音量でビートの強い曲がかかれば反射的に踊るのもエンターテイメントかもしれないけど、芝居の面白さは、会話や、もっと言うなら、登場人物たちが雄弁に紡ぐ物語の行間で揺れ動く感情こそがエンターテイメントだと信じてます。全部やってる。てんこ盛りの100分。エンターテイメントからちょっとはみ出たところにある、舞台表現と真っ向勝負している作品です。