公演における物販の認識
演劇をする者です。
世の中の数ある娯楽の中から、演劇を選んで劇場に足を運んでくださるお客様。あなた方が観に来てくださるおかげで公演が成立する。どんな名作でも観てもらわないことには評価もされようがないですから。
チケット代を出して頂き、観てもらう事こそ、表現者への最大の賛辞でもあり応援であり激励であるのですが、実は物販(公演グッズ)においては運営側と観客とでは認識にズレがあるんじゃないかと思っていて。
もちろん昨今の劇場でよく見かける「公演Tシャツ」や「缶バッジ」「舞台写真」「公演パンフレット」なんていうのは、イベントが盛り上がるし賑やかで良い。欲しい方が手を伸ばして頂けるコンテンツ、公演のオプション、言ってしまえば「作りたいから作っている」「盛り上げる為に作っている」と解釈されているんじゃないでしょうか。それも間違いではないのですが、実は小演劇界と呼ばれる界隈においての公演イベント形態では、打ち手側からするとこの物販が公演でマイナスを出さないための超重要コンテンツとなっているケースが多いのです。
公演って収入源が入場料金のみなんです。そこから、スタッフ代、劇場代、機材費、運搬費、稽古場代、ギャラ、宣伝代、諸々、すべての公演の為の予算を捻出する、というのがフォーマットとなります。スポンサーがついたりすれば話は別だけど、基本はお客様の入場料金のみで、この金額設定を誤るともう御破算に成りかねない。とはいえ、打ち手の心理としては
「映画よりも高いのはなぁ」「学生さんには安く観て欲しい」「そもそもこんな金額高すぎる」と少しでも安くしたいが、そうもいかないといういろんな事情でチケット料金が決定します。
さらに稽古と同時に宣伝もする。この宣伝が行き届いていてない場合はもちろん観客動員に影響が出て、極端に言えば設定した動員数に届かない場合もあって、もちろんこの場合も御破算。なるべく毎回満席に、少しでもたくさんのお客様に観ていただけるように座席も確保する。
応援してくださるお客様がいるのはとても嬉しい事だし、感想や日頃の関わりにも力を頂きながら我々は創作をしています。
ここで公演物販というもののコンテンツの解釈。基本的に劇場にお越しいただいたお客様に対してのみ設置された物販ブースで公演グッズの販売をいたします。劇場でしか手に入らない限定商品も多いし、大前提として公演グッズを手に入れて喜んでいただく事が目的であるのですが、実は公演の収支を成立させる強力なコンテンツでもあるのです。
極論。
いくら良い作品で心に残る公演だったとしても、どれだけ応援していただいたとしても、その公演が赤字、たったそれだけのことで主宰はたちまち立ち行きが悪くなり、次回の公演すらままならなくなってしまうのです。誰も言えない事なのかもしれないし、必要のないことなのかもしれません。これを言い始めると「なんだよ結局金儲けかよ」と言った反論やバッシングも十分に受けると覚悟した上で、それでもやはりお伝えしたい。
自分が関わる公演だけに限らず、「物販をお買い上げいただく」という行為そのものが我々の表現を活かしてくれます。公演でいただく差し入れや、お花ももちろん嬉しいです。ですがさらに「グッズをゲットすることこそ、役者の、そして公演の、最大の応援である」と思ってもらえるととても嬉しいのです。
せっかく作った物販も売れ残ってしまうと、在庫として抱えなくてはなりません。それが公演オリジナルグッズだともう次回ではそんなに売れなくなってしまう「今だけ」という価値も付属しています。それが役者の手当てにも繋がりますし、次回公演の表現が豪華になったりするキッカケになったりもします。応援したい人たちはいつでも創作を諦めないし、どんどん挑戦を続けます。ですが運営資金というどうしようも無い壁が目の前を覆い尽くし、敢え無く表現を断念する、という事もよくあります。
もちろん表現活動は、好き好んでやっているものでもあり、それこそ芸術だとも言えます。本当にいいなと思ったグッズを見かけたら是非、手にとって、お気に入りの俳優のサイン入りなんかを手に入れてください。我々の資金源でもあり、またエネルギー源でもありますので。最後に一番大事な事を加えるとすると。物販は、公演に参加するメンバーのみんなで渾身の力で考えに考え抜いて超お気に入りのものを、販売しています。
作品も、グッズも、全ては少しでも喜んで頂きたい一心であるという事だけ知っておいてもらえると、非常に嬉しいです。
なんだか長くなっちゃったので終わろうかなと思ったけど、ここからはいつもの調子の超徒然とした日記になります。
先々週くらいの事。もう随分長くお世話になったスマホケースが限界を迎えた。自分が使っているスマホはiPhone6でもう随分古い型式の部類に入る。新調したいけれども、今年に入って修理に出したばかり。まだまだ現役。新しいケースを誂えるべく探し歩いたけど、ピンと来るものと巡り会えずしばらくは裸のまま利用していたけど、やっぱり危なっかしい。というわけでせっかくの機会だし自分でデザインしたものを入稿してみた。
ジャーン。
今絶賛稽古中のえーびーがた「地球ロックンロード」のスマホケース。文房具やキャラクターイラスト、宣材写真、ロゴと、割と素材がたくさんあったので楽しく遊びながら組み上げた。おお、普通にお店で売ってそう!手触りや質感、インクの糊具合もかなりのクオリティ。色合いも想像にかなり近いものが出来上がった!
今日、えーびーがたのツイキャスで紹介してもらいましたが、これを本番当日、物販でグッズとして販売するかどうか検討できたら良いなーってところまで行きました。とは言ってもあんまり他ではみられない感じのグッズなので、しっかりと目処が立てば実現だけど、グッズ班と相談です。
小野村さんはこれを見て「ピンクが欲しい」と言った。
真壁さんはそれを聞いて「はぁ!?」みたいな反応だった。
確かに別の色を作るのはそんなに簡単な作業ではないけど、せっかくオーダーいただいたしピンクのデザインも組み上げました。作品自体のイメージは勝手に寒色系かなぁと思って青を基調にしたけど、確かに言われてみればスマホケースだけ見れば種類が欲しくなる心理はわかるような気もする。でピンクも作ったけど、別ルートで「黄色はないんかい」と言われた。ない!黄色はもうない。作るとしても二つだけ!作品も面白くするけど、グッズも盛り上がったら良いなぁ、門出のような公演だもの。