先生の話。
中学の時の、担任になった男の先生が国語の先生だったのだけど、こんな事を言っていたのを思い出したので簡単に書いておく。
ホームルームか何かの最中に先生が突然
「みんな聞いてくれ。おれ、結婚するんだ。」
授業を止めてまでする話かと内心思ったが、惚気ているわけでもなく何かを伝えようと真剣な眼差しの先生の次の言葉にクラス全員が注目して黙った。
「でな。結婚相手に、これから先、死ぬまで毎日あなたを好きです!と言い続ける約束をしようとしたら彼女にこう返されたんだ。」
「出来もしない約束なんてしなくて良いわ。約束が守れなくなった時に辛いし悲しいもの。」
「確かにおれは【死ぬまで毎日】は言い過ぎたと思ったんだ」
なんの話や。
ツッコミたくなるのをグッと堪えて話の続きを待つ教室。
先生の奧さんになる人は先生に向かってこう言ったそうだ。
「明日も私の事が好きだという言葉を、明日もまた言ってちょうだい。明日になったらまた同じことを言って。そしたら私は毎日綺麗でいるわ。もし言えなくなるときが来たら、それはどちらかが死んでしまう時よ。」
「おれは良い奥さんをもらったなと思ったんだ。みんなも真似して良いぞ。」
けっきょく惚気だったわけだけれども、奥さんは、一生好きと言い続けてと言う願いを言ったんだ。それも「毎日」とか「一生」とか言う重たそうな言葉ではなく、明日の繰り返しという素敵な言い回しに置換されただけなのだけど、男の立場からすると、この願い事はとても心地よくて、さらに好きに対して私も好きよ、という返しではなく「綺麗でいる」と言っているところも見事だ。少なくとも先生が奥さんに愛を告げていれば綺麗でいると言ってくれているし、愛の告白こそ女性が綺麗になる秘訣なんだという女性から男性に向けてのメッセージも込められている。ロマンチックだ。
今回の一連の流れの中で、自分が一番興味を惹かれたのは、国語の先生が言葉たくみに骨抜きにされているところだ。国語教師の攻略法をよく理解した聡い奥さんで先生にぴったりだ。
おわり。