針をチクリと。

針をチクリと。

恐ろしい構図の写真。稽古前に掃除機でパンチカーペットを清掃してくれる蟷螂さんに飯嶋松之助くんが「ここも汚れてんぞ」と指示を出している構図。

本当は「変わりますよ!」と駆け寄った松之助くんに掃除機を奪われるのを拒んだ蟷螂さんの図でした。小山くんの「変わりますよ」おれの「変わりますよ」松之助くんの「変わりますよ」を全部拒んだ蟷螂さん。昨年冬に出演させていただいた「足場の上のゴースト」のバラしでも掃除をかけていらっしゃった蟷螂さん。その時も「変わりますよ」を断られた記憶があって、懐かしい気持ちになりながら、稽古環境を綺麗にしていただいた先輩と共に稽古が始まる。物語の中でも重要なシーンを二つ。

蟷螂さん、森崎さん、自分だけのやりとりを、しっかり何度も何度も繰り返して「もう一回」がこだまする密度ある稽古。台詞を覚えようキャンペーン実施中。男性だけの現場というのは男子校みたいな、部活みたいなそんな独特の空気になっていく。

山浦さんが来て、日呂さんが来て、よっしーが来て、夢祈くんといぶちゃんが代役をしてくれつつ、シーンナンバリングの2幕を流れでやったり6幕をやったり序の幕をやったり、物語には全く関係のない問題シーンを山浦さん込みでやってみた。やっぱりミッションインポッシブルすぎる。もっと工夫をしないとアレが飛び出てしまう。

立ち稽古をしていて、蟷螂さん、山浦さん、森崎さん、そして自分のシーンをやっていて、「!」となった。

今この中で一番若手なん自分や!

HEP HALLでそんな求心力の高いシーンの渦中に立つ。絵がすごい。弱点があったらもう自分だ。稽古も隈なくせねば!

推しはやっぱり森崎さんのシーンで。森崎さんの持つ迫力を物語が飲み込む一瞬を生み出せたら息を飲めるなぁ。名シーンは、大人数で踊ったり殺陣をしたりする事で生まれる事もあるけど、そうじゃないイニシエの手法もちゃんとあるよ。あ、でも大人数で踊ったり殺陣をしたりも、結局するんだけども。

推理小説を読んでいて一番おもしろいと思うのは、探偵が犯人を言い当てる瞬間でも、犯人を追い込でいく探偵の物言いでもなく、なんで犯行に及んだのかという部分に尽きる。そんな自分は、犯人の動機が明確になったあとは惰性みたいに感じる事もしばしば。

だから、剣を抜いてからの太刀筋や決着よりも、剣を抜くに至る気持ちの部分を自分なりに描きたいと思って作っていて、もしかしたら「関ヶ原の見物人」は、今お客さんが観たいと思っているものを舞台でちっとも描いていないかもしれないっ。そのかわりにと言ってはなんだけど、エンタメがすっかり殺陣芝居と解釈されきってしまったこの界隈において、さらにはそれをエンタメ芝居だと思っている観客の皆様の、痺れた頭に、針をチクリと刺したいのです。

殺陣が嫌いなんじゃなくて、むしろ殺陣は大好きなんだけども、理由のない殺陣を無条件に感動的には作れないから。思い切り茶化しでもしない限りは。

公演が終わったらボコボコにしてくれてもいいから観に来てくれよな。

あ、でも全く必要性のない殺陣もあるわ。どっちの作品にも。狂ってる!

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